一般進化論 

 

general theory of evolution

 

 

(注) 不慣れな言葉が出てきますが、あとでわかるようになりますので気にしないで読み進めてください。

 

 


 

 第1説明

 

 世界のあらゆる物的存在(物理的に表現された情報を含む)は、散逸構造(さんいつこうぞう)です。

 散逸(さんいつ)とは、整理されてまとまっていた書物や文献などが、バラバラに散って乱雑な状態になり、何がどこにあるのかわからなくなってしまうことです。

 世の中のあらゆるものは、そういう散逸構造であり、「整理してひとまとめにしておく努力」が失われると、バラバラになっていきます。

 

 

 人体は散逸構造(さんいつこうぞう)です。毎日食べて、ウンチをして、生きる努力をしなければ死んでバラバラになってしまいます。

 国家は散逸構造です。たくさんの人間が協力し合ってまとまり国体を維持する努力を怠るようになれば、国家は崩壊してバラバラになります。

 世界は、いろいろな散逸構造が集まってできています。

 

 ダーウィンの生物進化論は、すべての散逸構造に適用できます(生物対象の特殊進化論→→→散逸構造の進化論:一般進化論)。

 つまり、私たちホモサピエンスが知覚でとらえている世界の森羅万象は、「様々な散逸構造の進化の過程」であると理解することができます。

 環境変化にうまく適応できている散逸構造は長く生き残り、うまく適応できなくなった散逸構造は壊れて消え去ります。

 

 科学の用語で説明を受けると少し難しそうに思えるかもしれませんが、このような理解の仕方は仏教の世界観そのものなので、多くの日本人にとって難しい話ではありません。

 仏教の世界観を知らない西洋人などは、小難しい自然科学の言葉を使わないと理解が難しいのでしょう。

 

 このウェブページでは、仏教の世界観を知っている日本人を対象として、なるべくわかりやすく一般進化論を紹介します。

 

 


 

 第2説明

 

 生物は散逸構造(さんいつこうぞう)であり、生物についてのダーウィンの進化論はすべての散逸構造に適用できます。

 生物以外にも拡大した進化論を「一般進化論」と私は呼んでいます。

 一般進化論は、実は仏教のエッセンスそのものであり、日本人にはとても馴染みのある考え方です。

 

 「平家物語」の世界観は、仏教の無常観です。

 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理を顕はす。奢れる人も久しからず。唯春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

 ぎおんしょうじゃのかねのこえ、しょぎょうむじょうのひびきあり。さらそうじゅのはなのいろ、じょうしゃひっすいのことわりをあらわす。おごれるひともひさしからず、ただはるのよのゆめのごとし。たけきものもついにはほろびぬ、ひとえにかぜのまえのちりにおなじ。

 参考解説:【全文ふりがな付き】平家物語冒頭「祇園精舎の鐘の声」の意味を徹底解説!(2024.08.20):▶ ▶ ▶

 

 鴨長明の「方丈記」で描かれているのも散逸構造(さんいつこうぞう)です。

 ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮ぶ泡沫(うたかた)は、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある、人と栖(すみか)と、又かくのごとし。

 たましきの都のうちに、棟(むね)を並べ、甍(いらか)を争へる、高き、いやしき人の住ひは、世々(よよ)を経て、尽きせぬ物なれど、是(これ)をまことかと尋(たずぬ)れば、昔しありし家は稀なり。或は去年(こぞ)焼けて今年つくれり。或(あるい)は大家(おほいえ)ほろびて小家(こいへ)となる。住む人も是に同じ。所もかはらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。朝(あした)に死に、夕(ゆふべ)に生るるならひ、ただ水の泡にぞ似りける。

 不知(しらず)、生れ死ぬる人、何方(いづかた)より来たりて、何方へか去る。また不知、仮の宿り(やどり)、誰が為(たがため)にか心を悩まし、何によりてか目を喜ばしむる。その、主(あるじ)と栖(すみか)と、無常を争ふさま、いはばあさがほの露に異ならず。或(あるい)は露落ちて花残れり。残るといへども、朝日に枯れぬ。或は花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども、夕(ゆふべ)を待つ事なし。

 参考解説:鴨長明の方丈記|無常観とは?内容解説|原文と現代語訳(2020.02.28):▶ ▶ ▶

 参考解説:【全文】鴨長明『方丈記』原文と現代語訳をわかりやすく解説(2024.04.21):▶ ▶ ▶

 

 仏教の世界観を知らない西洋人等は、「ダーウィンの生物進化論」や熱力学、「イリヤ・プリゴジンの散逸構造論」などで出てくるエネルギー、情報、エントロピー、熱力学第2法則といった科学的な用語を使った説明を通じてでないと「無常の世界観」を理解することが難しいのかもしれません。

 

 では、般若心経(はんにゃしんぎょう)の動画を2つ

 最初の1分後に「色即是空 空即是色」が出てくるので、そこまで聴けばよいでしょう。

 【作業用BGM (1hour) 】般若心経ミュージック動画 - 2020年総集編 - / 薬師寺寛邦 キッサコ(歌う僧侶 薬師寺寛邦 キッサコ / Kanho Yakushiji)(56:47)

 

 

 【リラックス音楽 (30分間) 】般若心経ミュージック遍路 - 2022年前半【総集編】/ 薬師寺寛邦 キッサコ(歌う僧侶 薬師寺寛邦 キッサコ / Kanho Yakushiji)(31:48)

 

 

 


 

 第3説明

 

 簡単に言うと、散逸構造(さんいつこうぞう)とは、川の流れの途中に生じる渦模様(うずもよう) のようなものです。

 

 

 模様は別に渦巻でなくても構いません。何らかの水模様です。

 そうした水模様を思い浮かべることができれば、次のことは容易に理解できると思います。

 

 

 

 水模様に出入りする水の流れが妨げられると、最初にあった水模様は消えます。

 模様は、あくまで水の流れの中で生じているのです。

 では、水模様の中では何が起こっているのでしょうか?

 

 

 


 

 ここから先は、日本人には不要な「まわりくどい説明」となります。エネルギーとか、エントロピーとかの言葉が出てきますが、理解できなくても気にする必要はありません。

 

 

 第4説明

 

 では、まずエントロピー entropy について説明します。

 エントロピーとは、「単位時間に現れる情報の総量」のことです。

 

 次の図をご覧ください。

 4枚のカードがあります。

 それぞれのカードに絵のようなものがあります。

 絵は静止しています。

 カードの1枚1枚が、それぞれひとつの情報を表しています。

 簡単な絵もあれば、複雑な絵もありますが、どれも情報としては「等価」です。

 

 

 日常語では、複雑な絵に対して「情報量が多い」といった表現をしますが、そうした表現方法はここでは理解の邪魔(じゃま)になります。

 見た目が簡単だろうが、複雑だろうが、変化していない静止した構造は「ひとつの情報(=構造)」と捉えます。

 そして情報(=構造)とは、言い換えると「分布の偏り」のことです。

 

 

 したがって、静止した絵のカード4枚全体をまとめて「ひとつの情報」と捉えることもできます。

 そこで、宇宙規模で考えることにします。

 そして、カエルの目で宇宙全体を見ることにします。

 

 カエルの目?

 カエルは動いているものしか見ていないそうです。

 動いているものが小さければエサかも知れないと思って口の中に入れるようです。

 まず「静止した宇宙」を扱います。

 カエルの目で見ると、静止した宇宙全体が持つ情報としての価値は「ゼロ」です。

 動いていないものがエサである可能性はカエルにとっては「ゼロ」です。

 カエルはこの宇宙を飲み込もうとはしません。

 

 さて、ひとつの宇宙にサムライが近づき、真っ二つに切り裂いたとします。宇宙が2つになりました。

 宇宙が2つになる動きがカエルの目には見えます。

 カエルの目で見ると、分割された2種類の宇宙全体が持つ情報としての価値は「1」です。分割の動きが1回見えたということです。

 (2枚のカードとは異なり)2つの宇宙はすぐに拡がり、重なり合います。

 宇宙は2つに切り裂かれ、別々の宇宙ができたのに重なっているなんて、なんとなく量子力学っぽい素敵な世界です。

 カエルは大きく口を開けて宇宙を飲み込んでも良いのですが、慎重な性格なのでもう少し様子を見ることにします。

 

 そこにまたサムライが近づき、2種類の宇宙を真っ二つに切り裂いたとします。宇宙が4つになりました。

 2つの宇宙が4つになる動きがカエルの目には見えます。

 カエルの目で見ると、2分割を2回受けてできた4種類の宇宙全体が持つ情報としての価値は「2」です。

 最初から数えると分割の動きが合計2回見えたということで、カエルは宇宙全体が自分のエサかもしれないという確信の度合いを強めていきます(情報としての確からしさが増していきます)。

 

 

 サムライが666回カタナを振り下ろし、宇宙全体の持つ情報の価値が「666」に到達した時、カエルは宇宙全体を間違いなくエサだと確信し、丸呑みしてしまいました。

 

 以上、時計は無いけれど物事が順におこる世界で、カエルの目で宇宙全体を眺めて「情報の価値」が大きくなっていく様子を見ました。

 このとき、宇宙の種類と「情報の価値」との対応は対数で換算可能です。

 先の例だと、こんな感じです(↓)。

 

 

 もちろん宇宙の種類の数をそのまま扱っても良いのですが、ホモサピエンスの脳のキャパシティーは大きくなく、また「無価値=0」とするためにも対数を使います。

 

 指数とか、対数とか、はるか昔に忘れたという方は、次の簡単な計算例を見て少し思い出してください。

 

 

 では次に、時計のある世界に戻り「情報の価値」を考えます。

 ある所に悪魔がいて、同じ価値を持つ宝の隠し場所を示す「A」と「B」2枚のカードを持っています。

 

 

 悪魔に宝のありかを教えろと求めると、悪魔は2枚のカードのうち1枚を選んで見せてくれます。

 このとき悪魔は、「A」を選んだときは3回、「B」を選んだときは1回見せます。

 

 

 さて、大勢の貪欲な人々が集まり、悪魔に宝のありかを教えろと求めました。

 悪魔の見せてくれる「A」と「B」のカードのどちらに価値があるでしょうか。

 

 もちろん「B」ですね。

 3回表示される「A」は読み取りやすいので、お宝に近づくライバルが増えます。

 1回だけ表示される「B」を読み取ることができたときは、お宝を独占できるかもしれません。

 悪魔が一定の確率で「A(確率:3/4)」か「B(確率:1/4)」を繰り返し選んで見せる時も情報の価値は同様です。

 

 

 出現する確率が低いほど宝の価値は大きくなります。

 日常では「希少価値(きしょうかち)」と呼ばれています。

 カード「A」も「B」も、同じ価値を持つ宝のありかを示しているので、無限に何回も見せられた時は等価値になりますが、そうでないときは、見せられる回数が少なくなればなるほど(出現確率が小さくなるほど)、情報としての価値は大きくなります。

 

 そこでカード「 i 」の出現確率を Pi とし、確率が小さいほど計算値が大きくなるように逆数 1/Pi をとり、対数化して log(1/Piにしたものを考えます。

 

 

 たとえば対数の底を 2 とすると、カード「A(出現確率 3/4)」の価値は log2(1/(3/4)) = 0.4150・・・ 、カード「B(出現確率 1/4)」の価値は log2(1/(1/4)) = 2 と計算されます。

 読まなくてよい注記:正統派の数学ではこの「情報の価値」を「情報量」と呼んでいますが、ここでは無視して、次に説明するものを「情報量」とします。

 

 このとき、カード「A」などの出現確率は、単位時間当たりの出現回数や出現時間にも対応しています。

 そこで、「出現確率 ✕ 情報の価値」を計算して「情報の量」とします。その計算式には確率が2回出てきて、まるで二重課税のような気持ちの良い数式です。

 

 

 たとえば対数の底を 2 とすると、カード「A(出現確率 3/4)」の情報量は (3/4)✕ log2(1/(3/4)) = 0.311・・・ 、カード「B(出現確率 1/4)」の情報量は (1/4)✕ log2(1/(1/4)) = 0.5 と計算されます。

 

 ここで、カード「A」と「B」の情報量を足し合わせると 0.811・・・となります。

 これは悪魔がカード「A」と「B」を使って発信している 単位時間当たりの総情報量 ということになります。

 

 

 これを エントロピー と呼んでいます。

 

 読まなくてよい注記:正統派の数学では「情報の価値」を「情報量」と呼び、その統計学的な「期待値」の計算式としてエントロピーを定義しています。ここでは、数学的なエントロピーも熱力学のエントロピーも同じものであるという立場からエントロピーの意味づけを試みています。試みなので失敗するかもしれません。

 

 さて、カードでは実感がわきにくいでしょうから、スイカで説明します。

 

 

 スイカが全部で4切れあります。

 「A」には普通に甘いスイカが3切れ、「B」にはものすごく甘くて美味しいスイカが1切れあります。

 均等な確率のくじを引いて、AもしくはBのスイカの皿をもらえるとき、「A(3切れ)」の価値を当たる確率( 3/4 )の逆数( 4/3 )あるいはその対数( log(4/3) )で考えることは妥当なことでしょう。

 「B(すごく甘い1切れ)」の価値は当たる確率( 1/4 )の逆数( 4/1 )あるいはその対数( log(4/1) )で考えます。

 

 しかし「A」にはスイカが3切れありますから、ノドが渇いているときは味以上に魅力的です。

 そこで、先ほど計算した「A」の価値に、Aが当たる確率の大きさをかけて「A」の皿(スイカ3切れ)の魅力量とし、「B」価値に、Bが当たる確率の大きさをかけて「B」の皿(すごく甘いスイカ1切れ)の魅力量として、どちらがよいかを比較検討することは妥当なことだと考えられます。

 

 もし「A」も「B」も頂ける場合は、各々の魅力量を足して総魅力量(=エントロピー)とします。

 

 ではここで、いろいろな悪魔についてエントロピーを計算してみます。

 

 

 ・・・工事中・・・

 

 


 

 

 

 第5説明